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ターリヒ弦楽四重奏団
弦楽四重奏曲第
1
3番の最終版の最終章である「アレグロ」は、ベートーヴェンが最
後に作曲した楽曲である。この楽章では、それまでの不均一さを、より秩序のある
音楽スペースに位置づけている。この楽章に至るまでに聞かれた激しいコントラス
トやためらうような問いは、熱気を帯びた、しかし少々外的なエネルギーのほとば
しりに取って代わった。しかしこれは、曖昧さを解決するというより、その曖昧さ
を長引かせるものとなった。この楽章は遠いハイドン賛である。ベートーヴェンの
作品の中でも徹底して実験的なこの弦楽四重奏曲に、より明白に型にはまった解決
策を提供しているのがこの「アレグロ」なのである。
『大フーガ』の冒険は、興奮に満ちた緊張と分解された音楽的現実によって、多く
の人々の耳に最高の結論として響いているようだ。『アレグロ』にみられるより小
さな意義や、もろいようにさえ感じられる静かな様相はしかし、そこに至る
5
つの
楽章に、全く異なった意味を持たせることとなった。ベートーヴェンのこの最終的
な「視点」を完全におろそかにするのはどうだろう。たとえ作曲をめぐるエピソー
ド的・歴史的な状況が、この曲に少々疑いを持たせるようなものであったとして
も。