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スメタナ / フィビヒ
ズデネック・フィビヒは
600
曲以上の音楽を作曲した多作な作曲家で、その作
品はあらゆるジャンルにわたっている。そのうち室内楽は約
10
曲である。彼
は、自身の作品カタログに残すには不適切だとして、青年時代の作品の楽譜の
多くを破棄した。
『弦楽四重奏曲イ長調』
には作品番号がないが、破棄から逃れ
た作品である。手稿が発見されたのは、なんと
1928
年のことであった。
ボヘミアに生まれたフィビヒは、イグナーツ・モシェレスとベルドジヒ・スメ
タナのもとで高度な音楽教育を受け、合唱とオーケストラの指揮者として、特
にプラハ国民劇場などでおおいに活躍した。彼の作品は、いくつかのオペラと
ピアノ曲を除くと、こんにちでも国外で演奏されることが少ない。しかしそれ
らはチェコのロマン主義音楽において非常に重要な役割を果たすものである。
彼は熱心な国民主義者で、すべての声楽曲やオペラでチェコ語を擁護している
が、ドイツからの影響に対しては大きく開かれた精神も持ち合わせていた。
2
曲の『弦楽四重奏曲』では、古典的な形式にとどまりつつも個人的な語法を探
し出そうしている。『弦楽四重奏曲第
1
番イ長調』意外では、民族的な音楽や歌
が直接作品に取り入れられていることは少ない。