Background Image
Previous Page  36 / 40 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 36 / 40 Next Page
Page Background

36

ドヴォルザーク

弦楽五重奏曲変ホ長調 作品

97 B.180

は、先の『弦楽四重奏曲』よりも複雑な構成で

できている。

作曲が始められたのは

6

26

日で、『アメリカ弦楽四重奏曲』を書き終えて

3

日後

のことだった。ドヴォルザークは、「モーツァルト風」、つまりヴィオラが

2

挺の

形を選んだ。従って曲では中声部の豊かさが増しており、最初の軽快な「アレグ

ロ・ノン・タント」では、特にダイナミックな高揚やアメリカ民謡の様式化された

引用に効果を出している。このような表現の濃さはいかなる場合にも休まることが

なく、そこで活躍するのが

2

つのヴィオラなのである。

次の楽章では休息が得られると思いきや、「アレグロ・ヴィーヴォ」とテンポ表示

のある自由な形式のスケルツォが待っている。付点で、まるでレースのように細か

く刻まれるリズムが、全くボヘミア的なダンスのあいだ中、ずっと鳴り続けるので

ある。この楽章の真ん中では、他の楽器のピツィカート伴奏にのって、ヴィオラ

に、祖国を遠く離れた当時の状況を説明させているようでもある。