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ドヴォルザーク
弦楽五重奏曲変ホ長調 作品
97 B.180
は、先の『弦楽四重奏曲』よりも複雑な構成で
できている。
作曲が始められたのは
6
月
26
日で、『アメリカ弦楽四重奏曲』を書き終えて
3
日後
のことだった。ドヴォルザークは、「モーツァルト風」、つまりヴィオラが
2
挺の
形を選んだ。従って曲では中声部の豊かさが増しており、最初の軽快な「アレグ
ロ・ノン・タント」では、特にダイナミックな高揚やアメリカ民謡の様式化された
引用に効果を出している。このような表現の濃さはいかなる場合にも休まることが
なく、そこで活躍するのが
2
つのヴィオラなのである。
次の楽章では休息が得られると思いきや、「アレグロ・ヴィーヴォ」とテンポ表示
のある自由な形式のスケルツォが待っている。付点で、まるでレースのように細か
く刻まれるリズムが、全くボヘミア的なダンスのあいだ中、ずっと鳴り続けるので
ある。この楽章の真ん中では、他の楽器のピツィカート伴奏にのって、ヴィオラ
に、祖国を遠く離れた当時の状況を説明させているようでもある。