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ターリヒ弦楽四重奏団

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これらの音楽はアメリカ風だといえるだろうか?全くそうではないだろう。「モル

ト・ヴィヴァーチェ」の楽章に、ハッコウチョウの一種である小さな鳥、フウキン

チョウの鳴き声を見つけるには、専門的な耳が必要であろう。終楽章「ヴィヴァー

チェ・マ・ノン・トロッポ」にあるインディアンの太鼓はそれより容易く聞き分

けられるかもしれない。ドヴォルザークは

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音音階を自然に操る術をよく知ってい

たこともあり、ここでボヘミアのダンスが組み合わされているのは自明だった。

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音音階とは、オクターブの半音をのぞいた

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音からなる音階(ファ、ソ、ラ、ド、

レ)である。中央ヨーロッパの民衆音楽からの影響を強調したいときや、ヨーロッ

パ以外の音楽から何かを取り入れたいときには、作曲家がこれを使うことはよくあ

ることなのだ。

ドヴォルザークは、自身の音楽の「アメリカ性」について最も懐疑的であった。ヨ

ーロッパに帰った後、ヨーロッパ以外の音楽を取り入れたという口実に基づく非難

に、彼はしばしばいらだちを覚えた。ドヴォルザークがニューヨークの慌ただしさ

に深い印象を受けたとしても、幸いなことに、その描写だけで『新世界交響曲』を

語れるものではないのだ。