

著名な作曲家の中で最初に、ヴァオリン、ヴィオラ、チェロ
2
挺
ずつからなる弦楽六重奏を導入したのはルイジ・ボッケリーニ
(1743-1805)
で、
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世紀おわりのことだった。交響楽のような印
象を与えるこのような小さな「オーケストラ」は、ロマン派から
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世紀のアヴァンギャルドまで、多くの作曲家たちを魅了した。ドヴ
ォルザーク、グリエール、リムスキー=コルサコフ、チャイコフスキ
ー、ドホナーニ、レーガー、シェーンベルグ、シュトラウス、コルン
ゴルド、シュルホフ、マルティヌー、そしてマウリツィオ・カゲルま
で。ここに挙げた作曲家たちは、その書法はかなり異なってはい
るものの、皆、ブラームス以後、この新しい音楽形式に興味を示
した人物である。
ブラームスのふたつの『弦楽六重奏曲』は、有名な弦楽四重奏曲
や五重奏曲以前に書かれたもので、
1860
年と
1865
年の作曲で
ある。
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歳のときの作となる第一番には、ハイドン、ベートーヴェ
ン、シューベルトのような、彼があがめていた室内楽の巨匠と対
峙することへの不安を見て取るべきであろうか? 確かに彼は
模範となっている名高い音楽家たちを恐れ敬っていただろうが、
同時に彼らにオマージュを捧げているのである。先輩たちが使
わなかった珍しい形を選んだのはそのためであろう。