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モーツァルト
「かねてからイ長調・変ロ長調・ニ長調のソナタを最初に録音したいと考えて
いました。この3作には常に愛着を感じてきましたし、3作とも私が最も頻繁に
演奏してきたソナタです。イ長調を弾き始めたのは幼い頃です。初めて演奏し
たソナタの一つですので、自分がこの作品と共に成長した様な気持ちです。も
う85年近くこのソナタを演奏していますので、曲全体が頭の中に常に入って
いる感覚です。変ロ長調・ニ長調のソナタを弾き始めたのは、のちの青年時代
です。」
今回のディスクの選曲は必然的であり、イ長調の第
11
番
K.331
は自然な成り行きでこれに含
まれたということだ。ところでこの
K.331
は、長い間、
1778
年春にパリで作曲されたとみなされ
てきた。現在は、のちの
1783
年、モーツァルトがザルツブルクで夏を過ごした折に書かれた
と考えられている。変ロ長調(第
17
番
K.570
)、ニ長調(第
18
番
K.576
)の
2
作は、モーツァル
トが完成させた最後のピアノ・ソナタで、それぞれ
1789
年
2
月・
7
月に書き上げられている。い
ずれも、
4
月
8
日から
6
月
4
日にかけて行われたプラハ・ドレスデン・ライプツィヒ・ベルリンへ
の旅の前後に、ウィーンで作曲された。