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メナへム・プレスラー

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モーツァルトのソナタ全曲録音という冒険が開始したのは

2014

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月のことである。ピアノ

界の“生ける伝説”メナヘム・プレスラーはこの時、パリ国立高等音楽院で全曲録音の第一

弾に取り組んだ。モーツァルトの音楽は遠い昔からプレスラーの傍にあった。モーツァルト

は彼が格別の愛情を抱いている作曲家でもある。フランス人ヴァイオリニストのダニエル・

ギレ、アメリカ人チェリストのバーナード・グリーンハウスと共に「ボザール・トリオ」を結成した

際、そもそも

3

人が初めて結集したきっかけも、モーツァルトを演奏することであった。プレス

ラーは以来

53

年もの間、この三重奏団のピアニストを務めるた。

録音の場では、そうした歴史を折々に映し出す無比の瞬間を生きる感覚が湧きあがった。

それは世代を異にする者同士のエネルギーの結合によって、さらに活気づけられた。とい

うのも今回、学生たちが、精密な録音作業に参加したのである。彼らは授業で録音の仕事

を学んでいる者たち、つまり録音技師としてのキャリアのスタート地点にいる者たちである。

この度の体験は今後ずっと、彼らの職業人生を支えていくことだろう。