LDV153

38 PASSAGE:内なる旅~スピリチュアル•オデッセイ スクリャービンのソナタ第9番、通称《黒ミサ》は、まるで幻覚にさいなまれているような 作品です。霊性と闇の狭間にあるこの曲に、どのようにアプローチなさっていますか? 《黒ミサ》は、どこまでも暗く悪魔的で、極度の心理的不安定さと皮肉に満ちています。そし て危険なまでに魅惑的です。スクリャービンは譜面に「甘美に、ますますの愛撫と毒々しさ をもって」との指示を記しています。それは人を殺しかねない甘美さであり、そこには悪魔的 とも言えるアイロニーが潜んでいます。《黒ミサ》は、断片的な音楽で、半音階と[「悪魔の音 程」の異名をもつ]三全音の多用が目立ちます。私が先ほど心理的不安定さに言及したの も、まさにそのためです。絶えず、音楽が散り散りになっているように感じられるのです。かつ てヨハン・セバスティアン・バッハは、下行半音階は地獄へ、上行半音階は天国へ向かうと 述べました。この所見は、《黒ミサ》と向き合う私を魅了します。 今回のレコーディングで、どのようなサウンドを目指したのですか? 私たちは「極限」を探求しました。コンサートの場では実現することができない最弱音や極 めて繊細な音色を、レコーディングでは限界まで追求することができます。クローズ・マイキ ング(近接マイク収録)の手法を知るまでは、こうした微細なニュアンスを表現することな ど、とうてい不可能だと思っていました。

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