

ジャン=フィリップ・コラール
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ショパンの音楽は、私の中に非常に強い二つの感
情を呼び起こします。ひとつは、彼の音楽に恋す
る気持ちを読み取れることです。私はこの側面に
おおいに熱中しています。もうひとつは、ショパン
の音楽語法は、演奏家と聴衆のあいだのコミュニ
ケーションを実現する素晴らしい媒体だというこ
とです。少なくとも、このコミュニケーションのプロ
セスを加速させるものとなっています。ある意味で
は、コンサーティストが感じる孤独感を埋めてくれ
るものなのです。私は、コンサートのあとで聴衆に
話しかけることも個人的な関係を築くこともでき
ないまま、ホテルの部屋に閉じこもらなければな
らないことに、ずっと悩み続けてきました。ショパ
ンの音楽は、聴衆との対話を、少なくとも部分的に
つくってくれるのです。