30 ピアソラ | ブエノスアイレスの四季 | バンドネオン協奏曲 | オブリビオン 依頼のさいに、どのような芸術的要望を伝えましたか? デシャトニコフが手がけた有名な編曲版は、私にはピアソラの和声語法から随分とかけ離 れているように感じられます。そこで私はカルメルに、原曲に可能な限り忠実な編曲を望ん でいる旨を伝えました。じっさい、私が求めたのは他ならぬ“ピアソラの音楽”だったのです! ピアソラの音楽は、決して甘ったるくありません。無骨で、とげとげしく……峻烈でさえあり ます! 時に感傷に溺れる既(すんで)のところで涙を誘うこともありますが、それはあくまで 一時的な逸脱であり、時に暴力性さえ帯びた峻厳な瞬間と、鮮烈なコントラストを成してい ます。 ピアソラの《四季》とヴィヴァルディの《四季》には、何らかの類似性があるとお考えです か? 確かに構成曲は「冬」「春」などと題されていますが、共通点はそれだけです。ピアソラの《四 季》は各季節とその気候を写実的に描写してはいません。たとえば私たちは、〈冬〉を聴きな がらブエノスアイレスの冬を心に描くことはできません。ピアソラの《四季》は、季節とは別の ことを語っています。そこでは、彼がこよなく愛したブエノスアイレスの街に対する、どこまで も主観的で時に感傷的な印象や情感が表現されているのです。
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