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41 フロリアン・ノアック シュトラウス2世の種々のワルツによるパラフレーズを書く気になったのは、私の父が、シュトラ ウス2世の音楽をこよなく愛しているからである。私の家族は、毎年欠かさずウィーン・フィルハ ーモニー管弦楽団の「ニューイヤー・コンサート」を楽しみに視聴している。今回のパラフレー ズで用いた主題のほとんどは、《キス・ワルツ》のような比較的に知名度の低いワルツだ。私が 思い浮かべたのは、オルゴールの小さな踊り子がワルツを踊りながら徐々に活気づき、溌剌と し、やがてオブジェ(物)の状態に戻る様子である。 ティールマン・スザートは、16世紀にアントウェルペン(アントワープ)を拠点に活躍した作曲 家・出版者である《。ダンスリー(》1551)は、スザートが4声で編曲した舞曲が収められた曲集 で、彼自身により出版された。私は幼少期に、この舞曲集を繰り返し聞いていたが、カセット・テ ープが下火になったことから、その存在をすっかり忘れてしまった。ところが数年後、ケイト・ブ ランシェット主演の映画『エリザベス』(1998)で偶然に耳にし、これらの舞曲との“再会”を果 たした。私は今回、プーランクの《フランス組曲》の例に幾らか倣(なら)いつつ、三つの舞曲を 編曲した。いかなる歴史的なオーセンティシティ(真正さ)も目指さず、3曲の古風な芳香に身 をゆだねてみた。

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