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チェロ奏者カミーユ・トマ氏に貸与中の
ガリヤーノ「シャトー・パップ・クレマン」について
私が
2015
年に一挺のガリヤーノを入手したのは、誰の目にも触れぬ場所にしまっておくた
めではありません。この楽器の高貴さ、この楽器が独自にもつ抒情的で重厚な音色を、人
々と分かち合うためです。この重要な使命を果たすべく、私はカミーユ・トマ氏にガリヤーノ
を貸与することにしました。氏は同世代中、最も優れたフランス人チェリストのひとりと評され
る存在です。
フェルディナンド・ガリヤーノは、伝説的な、そして歴史上もっとも有名な楽器製作者のひと
りです。チェロ奏者にとって、ガリヤーノが製作した楽器を奏でることは、至上のチェロを奏
でることを意味します。ガリヤーノは、自分が製作した楽器を新たに購入した者が、これに“
ニックネーム”をつけることを望んでいました。
そのため私は、最高の格付けである“グラン・クリュ・クラセ”を授けられたグラーヴ(ボルド
ー)のワイナリー「シャトー・パップ・クレマン」の名を、チェロに与えました。日々、この楽器と
私のワイナリーを結び付けて考えずにはいられません――両者の共通点は、“名前”だけ
ではないのです。