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43 フロリアン・ノアック “超有名曲”である《ワルツ第2番(セカンド・ワルツ)》は、ショスタコーヴィチの一連の交響曲と 弦楽四重奏曲の陰で、彼の驚くべき多面性を物語っている。ショスタコーヴィチは学生時代に 映画館に勤め、無声映画のためにピアノを演奏していた。若い頃には、バレエ、劇付随音楽、映 画音楽の作曲にいそしみ《、二人でお茶を(Tea for Two)》を管弦楽用に編曲してさえいる《。 ワルツ第2番》は、もともとロシア映画『第一軍用列車(』1956)のために書かれた。以来、世界 中に知れわたった同曲は、スタンリー・キューブリックとラース・フォン・トリアーの映画や無数 のコマーシャルで用いられ、ショスタコーヴィチのもっとも有名な楽曲となるに至った。 《君のようになりたい(I wanna be like you)》は、ディズニーのアニメーション映画『ジャン グル・ブック』(1967)の主題歌だ。リチャード&ロバート・シャーマン兄弟が、同作でキング・ ルーイの声を演じたルイ・プリマ[米国ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のジャズ音楽家]の ために書いた歌曲であり、いうまでもなくニューオーリンズ・ジャズを彷彿させる。私がピアノ編 曲版の初稿を手がけたのは、この歌曲が大のお気に入りだった妹に贈るためだった。その後に 私は、この歌曲の複雑さ、ポリリズム、独特な語法をピアノに移し替えたいという欲求に少しず つ突き動かされた。そして技術的な難題と向き合う喜びを噛み締めながら、編曲を肉付けして いった。本盤に収められた稿が、その成果である。 これらの編曲を書き進めながら私が抱いた喜びが、お聞きくださ る方々に届くことを願って。

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