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50 ショパン | シークレット・ガーデン もっと古いピアノ――例えば1840年代の楽器――を選ばなかったのはなぜですか? より古い楽器を弾くには、長期にわたる実践経験、さらに言えば、その種の楽器に特化し た専門性が求められます。それは私が目指すアプローチではありませんでした。そのうえ、 プレイエルの楽器はショパンの時代以降も進化しました。 私には、今回用いた1905年製の楽器が、プレイエル社の探究の最終的な帰 結のように感じられます。同社の楽器製作は1905年の時点で卓越したクオリ ティに達しています。おそらくショパンに提供された楽器はいずれも、この水準 に完全に至ってはいませんでした。つまり私は進化を優先したというわけです。 この楽器と共に、ご自身のショパン演奏を再考なさったのでしょうか? その通りです。まず私は、ピアノ修復工房の空気を肌で感じ、シルヴィの仕事を目の当たり に見ながら、手工業と芸術の境に立つアプローチを改めて意識しました。彼女は、メート ル・ダール(フランス伝統工芸の最高技能者)であり、フランス高等職工連盟の会員でもあ ります。またワーグナーの話題になってしまいますね! 《ニュルンベルクのマイスタージン ガー》に出てくる靴職人ハンス・ザックスは、当時を代表する偉大な詩人でもあったでしょ う? 演奏家も見習わなければなりませんね。

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