LDV98-9
46 ショパン | シークレット・ガーデン 11歳の時にドミニク・メルレ先生と出会いました。(のちに私は、パリ国立音楽院でメルレ 先生に師事することになります。)私がショパンの《ピアノ・ソナタ第3番》を弾いたところ、 先生は、私にはあまりに難曲であるし、身体的にも危険だと言って、この曲を与えた私の師 を非難しました。確かに、おっしゃる通りです。その後まもなくして私は、メルレ先生の極端 なまでに厳しい要求――とりわけショパンのペダル指示にかんして――が、私のやる気を そぐことになるだろうと悟りました。先生の指導者としての見識の数々には感謝してもしき れません。ただし、それらを本当に理解できたのは随分と後になってからでした。 今お話しした幾つかのエピソードの中に、「シークレット・ガーデン」を彩る物々を見出すこ とができます。今回のプロジェクトは、私が長年ずっと録音を望みながら、その勇気が出な かったあらゆる作品で構成されています。[新型コロナ・ウィルス感染拡大中の]数か月に わたるロックダウンと外出制限が、その実現を早めることになりました。実を言うと、本盤 は私にとって、自分のディスコグラフィの中で最も“大胆不敵な”企画です。私は大いなる喜 びと共に、あらゆるリスクを冒しました! 録音を行ったメスのアルセナル・ホールの音響 は、音楽から様々な趣を引き出す素晴らしい可能性を秘めています。このホールでは、ショ パンの音楽にこれ以上なくふさわしい親密な響きを再現することさえできます。 貴方が敬愛する大作曲家たちの中で、ショパンはどのような位置を占めていますか? おそらくショパンは、全音楽史上、ワーグナーと並んで最も偉大な作曲家です。二人は、二 つの音楽的な革命を“扇動”したからです。しかもその革命は、二人の神経症的とも言える こだわりによって助長されました! ショパンは、例外はあるにせよ、ひたすらピアノ音楽を 書きましたし、ワーグナーもほぼオペラしか作曲しませんでした。それによって二人は、自身 が偏愛する分野を根こそぎ刷新したのです。
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