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50 アレクサンドル・スクリャービン — ニコライ・リムスキー=コルサコフ 本盤のプログラムの中央には、激烈な第2楽章が印象的な《ピアノ・ソナタ第4番》が置 かれています。このほかに今回あなたは、明らかにロマン派時代の形式にのっとった作 品――左手のための極めて表情豊かな《前奏曲》と《夜想曲》、さらに《練習曲 作品8-12 》――を組み合わせています。作品8-12は、おそらくはスクリャービンの最も有名な作品 であり、ホロヴィッツが好んで弾いた楽曲の一つでもあります。 私自身はホロヴィッツとの出会いの場で、この練習曲を弾きませんでした。彼の“縄張り”に 踏み込むようなものですからね……。本盤には、いわば彼への“ウィンク(目くばせ)”として この曲を含めました。右手が高音域で飛び回る恐るべき練習曲で、つねに黒鍵に着地しな ければならないので、とりわけ私のように大きな指をもつピアニストには厄介です。 本盤のメインディッシュであるスクリャービンの《ピアノ協奏曲》(1896)は、じつに瑞々 しい作品であり、時に高揚して熱狂の渦を巻き起こします。その数ある魅力の一つは、素 朴な第2楽章〈アンダンテ〉が聞かせる、純粋無垢な夢想と束の間のファンタジーですね。 この曲のどこに惹かれますか? 第1楽章の冒頭からすぐさま、特異な世界に引き込まれます。今この瞬間の真実が立ちのぼ り、抒情性が天を翔け、多情なフレーズが紡がれていくのです。この曲を人前で弾くためな らどんな犠牲も厭いませんが、まだそれはトルコでしか実現していません。
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