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47 ジャン=フィリップ・コラール — ビルケント交響楽団 — エミール・タバコフ あなたが折々ラフマニノフの作品を録音してきたことはよく知られていますが、これまで のところ、あなたのディスコグラフィの中にスクリャービンの作品は見当たりません。二人 の作曲家の根本的な違いは何であると思われますか? ジャン=フィリップ・コラール — ラフマニノフはピアノ的な思考で曲を構想しています。彼 の作品は、ピアノ音楽特有の“交通ルール”に従って書かれていますが、スクリャービンはこ のルールとは距離を置き、いわば各曲を“種々の色彩が織り成す球体”として捉えています。 その最たる例が、最晩年の重層的で丸みを帯びた作品です。 スクリャービンの音楽との出会いについてお話しください。 ホロヴィッツによる練習曲の演奏をきっかけに関心を抱き、その後、主に初期の作品を弾く ようになりました。 まだショパンの影響を色濃く反映している時期のピアノ曲ということですね。スクリャー ビンが斬新な響きの世界を探求した後期作品についてはいかがですか? 誰かがコンサートで弾いているのを聞くのは好きですが、私自身は手を出していません。準 備に多くの時間と体力が必要になりますから……。どの作品も複雑で、きちんと仕上がる までに何年かかるか分かりません。スクリャービンの後期作品に足を踏み入れずにいる私 は、自らに課した使命の幾つかを果たし損ねています。
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