LDV91

49 ジャン=フィリップ・コラール 「演奏を人々の心に届けなければなりません。自分が長年のあいだ耕してきた音楽作品を 知的に扱い過ぎてはならないのです」と、コラールは断言する。彼が“耕してきた”レパートリ ーは、驚くべき“収穫”に結実している。そこにはショパン、シューマンからラフマニノフまで、 ロマン派の旗手たちが生んだ果実と、200年にわたるフランス音楽の歴史が詰まっている。 コラールが紡ぐ音世界には、つねに色彩が染み込んでいる。リトレの有名な『フランス語大 辞典』が「視覚器官に引き起こされる感覚、諸物質によってさまざまに反射される光」と定義 した色彩はしかし、この種の書物には馴染まない快楽主義的な知覚を勧める。それは、まさ しく自分が「色彩に飢えている」と語るコラールにとっては、実に馴染み深い感覚である。た だし、色彩なら何でもよいというわけではない。いわば色素までを味わい尽くすコラールは、 節度ある音風景がアルペッジョの虹や和音の余韻の中で鳴り響くとき、あらゆるニュアン スを知り尽くしているのだ。コラールは、師ピエール・サンカンのもとでの研鑽、ウラディミー ル・ホロヴィッツと育んだ友情、そして卓越した指揮者たちやオーケストラとの世界各地で の共演の記憶を辿るとき、自分は全てを聴衆に伝えられるのだと思い返す。そうして彼は、 色彩の神々である作曲家たちにオマージュを捧げるのである。

RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx