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46 フォーレ | 13の舟歌 ∙ バラード嬰へ長調 作品19 ピアノ独奏版の《バラード》は、やや掴みどころのない音楽であると思われますか? ところどころで奔放な想像力を感じさせながらも、技術的な難易度の高さを突きつけてくる 作品です。じっさい、この独奏版を弾いたフランツ・リストは“指が足りない”と述べたそうで す。確かに3ページ目から、指を巧緻に交差させなければなりません。それは離れ業も同然 です。しかも、ピアノ&オーケストラ版を弾いた後に独奏版を弾くときには、暗譜の面で苦労 させられます。 《13の舟歌》の一度目の録音と二度目の録音……二つの音世界の顕著な違いを、どの ように受けとめていますか? 今回は音響的な側面に細心の注意を払いました。私はいつも、その曲を初めて聞く人々の 立場に立とうと努めています。彼らが曲の全体像を把握できるよう配慮し、主題と対旋律 が理想的なかたちで展開するよう努めるだけでなく、響きの広がりの加減にも気を配らな ければなりません。厚すぎる響きによって聞き手を欺いてはいないか? あるいは反対に、 あまりに薄い響きで彼らを退屈させているのではないか? 40~50年前の私は、その点 にさほど大きな関心を寄せていませんでした。

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