LDV91

45 ジャン=フィリップ・コラール 《舟歌第1番》の魅力あふれる優美な主題は、すぐさま聞き手の心をつかみます。 演奏者としては、今あなたが仰った特徴を強調しすぎてはいけないと考えます。むしろ慎み を保ち、音楽が自然に流れているような印象を与えるべきです。だからこそ、第1番は容易 に理解できない音楽なのです。 第5番は名曲ですね。 全13曲の白眉だと思います。初期4曲の舟歌と、後期の禁欲的で簡素な舟歌、双方の性格 を見事に兼ね具えています。 魅惑的でほの暗い第9番は、全13曲のもう一つの極致をなしています。とりわけ、極めて 洗練された和声は印象的です。 力強さにも驚かされます! ただし、この舟歌を葬送曲風に弾かないよう注意が必要です。 イ短調という調性と、不適当なテンポゆえに、葬送曲のようになりがちですので……。 長い間あなたに寄り添ってきたこの音楽を、今どのように見つめていらっしゃいますか? 再びじっくりと向き合うことになり、転調や重なり合う主題など、多くの要素に大いに驚か されました。楽譜を隅々まで読み込み、注釈付き校訂版にも目を通しましたが、ある時点で 一段落がつきました。終わりのない探求ですからね……。

RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx