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44 フォーレ | 13の舟歌 ∙ バラード嬰へ長調 作品19 ご自身のこれまでの歩みを象徴するレパートリーの一つである《13の舟歌》を再び録音 しようと思われたのはなぜですか? 大絶賛を浴びた一度目の録音は、あなたを“フォー レ弾き”として世に知らしめただけでなく、あなたに国際舞台での活躍の機会をも与えま した。 ひょんなことから二度目の録音を決意しました。車に乗り、ラジオをかけたところ突然《舟 歌第1番》が流れてきたのです。私は一緒にいた妻を相手に、その演奏について言いたい放 題にコメントしました。“なんでこんな風に弾くんだろう? 解釈の問題かもしれないが、そ れにしたって、これは全くよくない。しかもテンポの変化が……ああ、でもこのあたりの弾き 方は、そこまで悪くない……云々……”数分後、事実が突きつけられました。私の演奏録音 でした……。愕然とし、咄嗟に“何とかしなくては”と考えました。やがてそれが抑えがたい欲 求となったのです。 昔の演奏録音のどのような点に、それほど落胆したのですか? 中間部の“波の動き”が冒頭とのバランスを欠いていました。抑揚や、両手が独立して動く箇 所にも納得がいきませんでしたし、全体として十分な水準に達していない演奏だと思いま した。私自身、何年もかけて《舟歌第1番》を弾き込んできたため、自分の中でこの曲が熟し たのでしょう。
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