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42 フォーレ | 13の舟歌 ∙ バラード嬰へ長調 作品19 初レコーディングにのぞむさいに、どのような準備をなさいましたか? かなり必死に準備したことを覚えています。というのも、シフラ・コンクール後、レコーディン グの日までほとんど時間がなかったのです。私の耳は大いに開かれていましたし、指もよく 動いたので、すぐに一連の舟歌を自分のものにできました。ただし当時の私が、この手のレ パートリーに必要とされる客観的な視点を身につけていたかどうかは疑問です。 とはいえフォーレは、当時のあなたにとってかなり身近なレパートリーでした。ご家族でフ ォーレの室内楽曲を頻繁に演奏なさっていたそうですね。 なかなかのピアノの腕前を誇った祖母が、家族を“フォーレ狂”にしたのです。そもそも私の 家族はドイツ音楽よりもフランス音楽を好む傾向にありました。私たちにとってフランス音 楽、とりわけフォーレの作品は、日々の食事のように身近なものでした。さらに私は16歳の ときに、フォーレのおかげでパリ国立音楽院で一等賞を得ることができました――課題曲 が《主題と変奏》だったのです。

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