LDV91
41 ジャン=フィリップ・コラール コラールによる《13の舟歌》の初回の録音と今回の録音の違いは顕著だ。彼は本盤におい て、この生き生きとした軽快なレパートリーに新鮮な空気を吹き入れている。二度目となる 本録音では、概してテンポがやや速めに設定されているいっぽうで、より充実した響きのテ クスチュアが、幾つかの舟歌にふくよかなサウンドを付与してもいる。第3番は今までにな い甘美さを湛えており、第7番では“音の波”の執拗な性格が強調されている。かつてコラー ルが第5番に授けた幾らかほっそりとしたシルエットは、本盤では丸みを帯びており、美し い音色が、冒頭の抗しがたい魅力を引き立てている。 1970年のジョルジュ・シフラ国際コンクールで優勝したあなたは、“La Voix de son maître”レーベルのアーティスティック・ディレクターであるペーテル・デ・ヨングの目に とまり、デビュー盤の録音を提案されました。なぜそのとき、フォーレの《13の舟歌》を選 曲したのですか? ジャン=フィリップ・コラール — ベートーヴェンのソナタのように無数の録音が存在する 楽曲は避け、個性的なプログラムにして欲しいと言われたからです。選曲のさいに、みなで『 ディアパゾン』のレコード・カタログのページをめくりました。ちょうど――フォーレが含まれ る――“F”の章を眺めていたとき、リリース数がかなり少ないことに気づきました。エリック・ ハイドシェックがすでに同じレーベルにフォーレの《夜想曲集》を録音していたため、自然と 《13の舟歌》にしようと話が進みました。13曲がLP盤に収まる長さだったことも決め手に なりました。
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