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37 そのようなわけで私は、リャプノフの音楽にも、すぐさま魅了されました。彼は、帝立地理学 協会からの依頼でロシア民謡を採集していました。しかし彼は、この任務に満足することな く、自作の大半で――実在の民族音楽にもとづいているか否かにかかわらず――旋法を 活用し、多彩な響きを生み出しました。この旋法的な色合いが、ロシアの多様な文化的様 相――スラヴ、ロシア正教、コーカサス、あるいは東洋的なもの――を喚起しています。 そしてそこには、ショパンとリストからの影響もみとめられます。さらにリャプ ノフは、ピアノ書法に対する極端なまでのこだわりによって、ピアノだけが表 現できる美を、この楽器から引き出そうとしました。そうしてリャプノフが到 達した限りなく豊かで多彩な音世界こそ、彼の音楽がもつ何よりの魅力だと 思います。 フローリアン・ノアック
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