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34 リャプノフ ︱ 12の超絶技巧練習曲 作品11 リャプノフは音楽史上で、同世代の作曲家たち――ラフマニノフとスクリャービン――と チャイコフスキーのあいだで割りを食っているように見えます。この立ち位置が、バラキレ フとのあまりに密な師弟関係と相まって、リャプノフの評価を妨げているのでしょうか?リ ムスキー=コルサコフ、ボロディン、ムソルグスキーら、チャイコフスキーと同世代の作曲 家たちも圧倒的な存在感を放っていますし、リャプノフのすぐ後の世代には、ストラヴィン スキー、さらにはプロコフィエフがいます…。リャプノフよりも高名な多くの大作曲家たち が、彼の影をやや薄くしているように思えます。この特異な歴史的状況を、どのようにお考 えですか? しばしばリャプノフは、独自の様式をもたない作曲家であると批判されます。じっさい彼は、 リストというよりは、バラキレフからあまりに強い影響を受けていたがゆえに、“手本の完全 な複製とみなされるもの以外は、ほとんど何も書けなかった(” ギイ・サクル)のです。リャプノ フには、独自の音楽言語の構築がやや無意味に思えたのかもしれません。彼が表現したか ったものは、革新を必要としていなかったのでしょう。 ラフマニノフやスクリャービンのような作曲家たちが、極めて強い個性の持ち主であったが ゆえに、先人たちの手本から解放され、斬新な音楽世界を切り拓いたことは確かです。しか しながら――リャプノフのピアノ曲が忘れられつつあることを前提とするならば――、先ほ ど名が挙がった大作曲家たちの誰一人として、この消失の“穴”を埋め、私たちを慰めること はできません。
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