LDV88-9
44 バッハ | 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ ヴァイオリン教師たちの中には、バッハの作品を演奏試験やコンクールで取り上げること が難しくなりつつあると嘆く人もいます。“良き”演奏/解釈をめぐる審査員たちの見解が、 あまりに異なるからです…… 確かに、各“陣営”が対立していることは事実です。それは悲劇と言えます。バッハの音楽の 偉大さは、そのような問題を超越しているというのに……。“法の条文は重要だが、法の精神 はより重大”であるのと同じです。“歴史的”ないし古楽器によるアプローチの擁護者たちの 中には、他の陣営の成果を頑なにみとめない人もいて、驚かされます。私自身は、自分とは異 なるアプローチであっても、それが和声的構造に対する確かな感覚と、テクストに合致した テンポ感と、熟達した器楽演奏によってなされている場合には、すすんで価値を認めます。あ る“バロック的”な解釈を耳にして、その自明な音楽的身振りに納得させられ、心動かされる ことがあれば、自分自身のアプローチを疑問視することさえあるでしょう。 私が立っている、相異なる二つの道の交差点は、ひょっとすると空想の世界 にしか存在しないのかもしれません。でも私は空想家なのです!
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