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38 ショスタコーヴィチ • ヴァインベルク 2人の類似と相違は、どのような点でもっとも際立っているのでしょうか? ジョゼフ: ショスタコーヴィチの2曲は、より具体的で現実世界に根を下ろしています。いっ ぽうヴァインベルクの三重奏曲は、より絵画的で、まるで音のフレスコ画のようです。この曲 を演奏していると、喚起力に富んだ様々な曲想ゆえに、一続きの絵が目の前を流れてゆくよ うな印象を受けます。またヴァインベルクは、リズムの屈性をいっそう掘り下げて捉えてい るように感じられます――その点においてショスタコーヴィチよりも極端です。 ヴィクトル: とはいえショスタコーヴィチの第2番とヴァインベルクの三重奏曲の書法は、か なり似ています。どちらも4楽章構成ですし、いずれのスケルツォ楽章も、さながらトッカー タのようです。ヴァインベルクが壮大な緩徐楽章〈ポエム〉で用いた幾つかの和音には、明 らかにショスタコーヴィチからの影響がうかがえます。また2曲とも、この上なく長大で荒々 しい終楽章で幕を閉じます。ただし、約10分間カオスが延々と続くヴァインベルクの終楽 章のほうが、より荒々しい印象を与えるように思います。 ヴァインベルクの三重奏曲は知名度が低く、録音もほとんど存在しません。作品への理 解を、どのように深めたのでしょうか? ヴィクトル: 確かに先行録音は、ごくわずかしか存在しません。ひるがえって、ショスタコー ヴィチの第2番の“伝説的な”録音は、ごまんとあります——周知のとおり、作曲者自身がピ アノ・パートを弾いている録音も2種、残されています。第2番の既存の録音にはそれぞれ 大きな違いがあり――特にテンポがまちまちです――、かえって悩まされることもあります が、当然ながら、すでに沢山の標識が立っている道で自分たちの方向性を探るほうが、格段 に容易です。ヴァインベルクの三重奏曲を演奏する際には、おのずと気怖じしてしまいます。 ほぼ未開拓の土地で、自分たちの解釈を築き上げなければならないのですから。
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