LDV81
トリオ・メトラル 37 なぜ本盤でヴァインベルクとショスタコーヴィチの3つの三重奏曲を組み合わせたので すか? ジュスティーヌ: もともと私たちが3曲を気に入っていたことはさておき……この2人の作曲 家の組み合わせには、歴史的な根拠もあります。ショスタコーヴィチとヴァインベルクは固 い友情で結ばれていました。2人の経歴は数年差で似通っており、2人とも映画に携わって いました。 ショスタコーヴィチがヴァインベルクの指導者であったことは一度もありませんが、それ でもヴァインベルクは、彼を師のように深く尊敬していました。2人は自作の譜をすすんで 交換し、互いに感化し合っていたそうです。当初、ナチス・ドイツを逃れたヴァインベルクが 亡命者としてソ連にやって来たとき、彼を大いに支援して励ましたのもショスタコーヴィチ でした。さらに彼は、ヴァインベルクが“ユダヤ復興運動”の罪で不当に投獄された際にも 奔走し、釈放を後押ししました。おまけに、ショスタコーヴィチの《ピアノ三重奏曲第2番》 (1944)は、当時のヨーロッパやソ連のユダヤ人たちが置かれていた苦境を意識して書 かれています。その一年後、ヴァインベルクも《ピアノ三重奏曲》を作曲しました。この2作品 は、強い因果関係で結ばれていますし、ヴァインベルクは自身の三重奏曲の中で、ショスタ コーヴィチの第2番を引用してもいます。また両曲には、ユダヤの旋律が幾つか用いられて いるうえに、その一部はそっくりです。 確かに“ヴァインベルクはショスタコーヴィチの焼き直しである”とよく言わ れますが、じっさいのところ、2人の作曲家の表現方法はおのおの独特で、大 きく異なります。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx