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トリオ・メトラル 35 このように具体的な物語や情景や印象を積極的に語る方法によって、音色を探り、的確な 感情を見つけ出すことができたのです。ある感情が十分に性格づけられ、頭の中で鮮明な イメージと結ばれていれば、聴衆にも、より容易にそれを伝えることができます。 ジュスティーヌ: 本盤に収めた3曲のうち、録音を通じてもっとも演奏が進化したのは、おそ らく第2番です。私たちにとって、これまで何度も演奏を依頼されてきた“主力の”楽曲だから でしょう。とはいえ、理由はそれだけではありません。私たちはレコーディング前の特異な高 揚感の中で、音色に対して新しいアプローチを取るようになったのです。時おりジョゼフと 私は、あるフレーズや音にかける力を調整するために半弓で弾いてみました。この曲に命を 吹き込むに当たって、レトリックや構造よりも音色を駆使するにはどうすればよいか?―― それが、私たちが抱いていた問題意識です。 ヴィクトル: 今回の録音は、トリオ・メトラルが第2番の解釈を新たにしたという点で、示唆 に富んだ体験でした。私たちは“現状”をそのままディスクに刻むことに満足せず、これまで の習慣や身体に染み付いていた表現を一度すべて白紙に戻し、この曲を学び直したので す。
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