LDV77
ダヴィド·グリマル 41 教育者イザイのもとに集まった多数の門下生たちの個性は、きわめて多様です。あなたが 考える“イザイ楽派”とは何でしょうか? 彼のヴァイオリン奏法に関しては、いくつかの証言が残されています。しかし今日、彼の演奏 芸術を余すことなく俯瞰できる録音は、ごくわずかしかありません。音楽家としても人間的に もカリスマ性にあふれていたイザイは、彼のもとで学び彼とともに演奏したあらゆるヴァイオ リニストたちの心に、強い印象を与えました。彼については、楽派よりも、インスピレーション という視点から論じるほうがよいように思われます。私には直観的に、イザイが、インスピレ ーションの源泉いやむしろ十字路のような存在に感じられます。彼は一筋の畝を作る代わ りに、幾筋もの畝を四方八方へと広げたのではないでしょうか。偉大なヴァイオリン奏者た ち全員が“楽派”を創始するわけではありません。彼らは、いくつもの世代を照らす灯台のよ うに、枠を超えてインスピレーションを授けます。 イザイの幾人かの弟子たちの名が、自然に私たちの頭に浮かびます。ルイス·パーシンガー( ユーディ·メニューイン、ルッジェーロ·リッチ、アイザック·スターンらが、若い頃に彼のもとで 学びました)や、ジョーゼフ·ギンゴールドなど……。伝説的な教育者ギンゴールドは、インデ ィアナ大学ブルーミントン校で教鞭を執り、ミリアム·フリード、ギル·シャハム、レオニダス·カ ヴァコス、ジョシュア·ベルら、多くのヴァイオリニストたちを育てました。 最後に、ギンゴールドの言葉を紹介したいと思います:“今日[1990年代]、時代は変わっ た。私たちが生きるコンピューターの時代に、ヴァイオリン演奏は、いまだかつてないほど高 い水準にある。オーケストラに属するヴァイオリニストなら誰でも、4秒もあれば、立ち上がっ てブラームスの協奏曲を弾くことができるだろう。とはいえ、往年の名ヴァイオリニストたち の演奏水準は、現代のそれよりもはるかに高いように思われる。上品さ、表現力、多彩な音 色をほこる彼らの演奏は、やはり別世界だった……。”ギンゴールドは、ある美しいドキュメン タリー映像――インターネット上で視聴できます――の中で、目に涙を浮かべながら、イザ イが弾いたショーソンの《詩曲》について語っています。それは確かに別世界でした。ヴァイオ リンは、この楽器を奏でる人間の魂とつながっており、聴衆は、それを聞きに演奏会へ足を 運んだのです。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx