LDV77
少なくともヴィルトゥオジティの観点から、6つのソナタをパガニーニの《24の奇想曲》と 比べて論じることはできますか? 超がつくほど柔軟で長い指をほこったパガニーニは、いわば“規格外”のヴァイオリニストで す。彼がその作品の中で発展させたヴィルトゥオジティは、彼自身の例外的で特殊な能力に 由来します。パガニーニの作品をたくさん練習したところで、必ずしも他のレパートリー―― 当時に話を限ればベートーヴェンやシューマンやシューベルトの作品――を容易に弾ける ようになるわけではありません。偉大なヴァイオリニストたちの大半は、パガニーニの作品を (演奏会では)あまり弾かないか、まったく取り上げません。確かに、パガニーニは音楽書法 を革新し、演奏家のパラダイムを一変させたとしばしば言われます。しかしながら、彼の作品 を滞りなく演奏しようとすれば、普遍的とは言えない特異な身体能力が求められます。 それとは反対に、私たちヴァイオリニストは、イザイの作品や、ブラームスあるいはシベリウス の協奏曲を弾くさいには、“居心地のよさ”を感じます。イザイの作品が求めるテクニックは、 彼がヴィエニャフスキとヴュータンから授けられた教えの延長線上にあるもので、音楽にとっ ても楽器にとっても無理がありません。それは、ヴァイオリンとも他のレパートリーとも調和 のとれた、普遍的なテクニックなのです。 40 イザイ / 6つの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ作品27
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx