LDV77
ダヴィド·グリマル 39 イザイの本格的な活動期間は1880年代から1930年代までと長期にわたり、2つの世代 にまたがっています。彼は、クララ·シューマンとドビュッシーのように私たちの頭の中では 大きな時間的隔たりのある音楽家たちと知り合い、交流しました。あなた自身は、イザイの 音楽世界と6つのソナタの音楽世界の特徴を、どのようにとらえていますか? イザイは1923年、65歳のときに6つのソナタを手がけて以来、終生この6曲を携えていまし た。この曲集こそ、彼がヴァイオリン音楽史にもたらした遺産と言えます。6曲は、彼の音楽家 としての歩みの集大成です。いっぽうで彼は、自身が考案した斬新な奏法によって未来への 扉を開いてもいます。それらは以後数十年間、多くの作曲家たちによって用いられました。私 たちは、6つのソナタを弾き込めば弾き込むほど、イザイのヴァイオリニストとしての芸術と 作曲家としての芸術が“共生”していることに感嘆させられます。 6つのソナタは、ジョヴァンニ·バッティスタ·ヴィオッティ以来、幾世代ものヴァイオリニストた ち――ロード、ドント、マルシック、サラサーテ、ヴィエニャフスキ、ヴュータンら――がこの楽 器とともに発展させてきた“語彙”をもとに書かれています。ちなみに、ヴィエニャフスキとヴュ ータンはイザイの師です。 20世紀になされた数々の録音は、素晴らしい“証言”となって、私たちにヴァイオリンの黄金 期を追体験させてくれます。イザイは、この黄金期に先立つ“十字路”にいた音楽家です。イ ザイが生きた熱気に満ちた時代を理解しなければなりません。彼は、そうそうたる作曲家た ち――ドビュッシー、ショーソン、ルクー、サン=サーンス、フォーレ、ジョンゲン、フランク、ヴ ィエルヌなど――のコミュニティにおいて中心的な役割を演じ、彼らから作品を献呈されま した。いっぽうでイザイは、より“古い”と考えられている世界とも繋がりがあり、ヴァイオリン 奏者ヨーゼフ·ヨアヒムやクララ·シューマンらとも親交を結んでいます。イザイが二人と出会 ったのは、彼がベルリンの楽団でコンサートマスターを務めていた1880年代です。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx