LDV77
ダヴィド·グリマル 37 《ソナタ第5番》は、イザイの愛弟子であるベルギー出身のマチュー·クリックボームに捧げ られており、象徴主義と印象主義を想い起こさせます。冒頭の〈曙光〉は、この曲集の中でも っとも美しい楽章の一つに数えられるでしょう。 スペイン出身のマヌエル·キロガに献呈された終曲(第6番)は、イベリアの種々のリズムをも とに書かれており、全ソナタの中で、もっとも超絶技巧に富んでいます。ヴァイオリンがなしえ るあらゆる妙技が、まるで花火のごとく華麗に噴出します。一つ、エピソードをお話ししましょ う。私はある公演で、自分が今いるガリシアがキロガの生地であることなどつゆも知らずに、 このソナタをアンコールで弾きました。 先ほど、6つのソナタを“ポートレートが並ぶ画廊”にたとえましたが、いっぽう私たちは、この 曲集を演奏会で取り上げるさいに、6曲の緊密な結びつきを実感させられます。私自身は、こ の曲集を2つの大きなソナタとみなすことができると考えています。つまり第1·2·3番が一つ のソナタ、そして第4·5·6番がもう一つのソナタ、というふうに。前述のとおり第1番はバッハ の《ソナタ第1番》を想起させますし、第4番はバッハの《パルティータ第1番》を彷彿させま す。中間楽章の役割をになう第2番と第5番において、イザイはライプツィヒのトーマスカン トルの幻影から解放されます。そして単独楽章である第3番·第6番が、2つの大きなソナタの 輝かしい大団円をそれぞれに聞かせます。どちらのフィナーレでも、イザイは先達への畏敬 の念から解き放たれ、飛翔しています。
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