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34 ウォルトン / グリジ / プロコフィエフ グリジの新曲の演奏も、録音を通じて変化しました。というのも、4月のコンサートの後、7月 の録音前に、カデンツァが加わることになったのです。当初は、約1分の短いカデンツァだ ったのですが、私がそれを残念がったところ、グリジから“君が書いてみたらどうか”と提案さ れました。曲の様式から逸脱しないカデンツァ、曲の意味を歪めないカデンツァを自分で書 くことなど、考えられませんでした。そこで私たちは幾度も対話を繰り返しました——私が出 すアイデアをもとに、グリジにカデンツァを書いてもらったのです。試行錯誤や推敲の末、 カデンツァはようやくレコーディング期間中に完成しました! 貴方は、さまざまな録音テイクを注意深く聞きながらレコーディングを進めたのでしょう か?それとも“生演奏”のときと同じ勢いや流儀で録音したのでしょうか? オーケストラとの録音の段取りは、あらかじめ細かく設定されていました。音響の調整の段 階では、バランスが気になって音響室にテイクを聞きにいっていました。“聞くこと”が、状況 を修正し、再び全てを繋いでくれました。音楽を、そして美しい音、音の距離感、空間を、 再び俯瞰できたからです。信頼できる録音スタッフたちのお陰で、私は何よりも重要なも の——音楽——に集中し続けることができました。
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