LDV75
アドリアン·ラ·マルカ 33 “英雄”のアルバムに話を戻しましょう。今回の録音は、貴方が1年間リエージュ·フィル のレジデント·アーティストを務めた経験と、密に、そして深く関わっているとお察ししま す。録音期間中、楽曲や人間関係をめぐって、新鮮な驚きはありましたか?また貴方の 演奏自体も、録音とともに変わっていったのでしょうか? ワン·シーズンを通してオーケストラとともに様々なレパートリーと向き合い、こうして1枚のア ルバムを録音できたことは、得難い機会でした!そしてリエージュ·フィルの人々との貴重な 交流の機会ともなりました。 6日間にわたる分刻みのスケジュールでの録音セッションは、私にとって大きな挑戦で した。 《ロメオ》の演奏は録音を通じて明らかに変貌しました。ヴィオラ&ピアノ版に慣れている私 から見れば、新版では多くのテンポの変更が生じています。たとえば〈バルコニーの情景〉 では、複数のシーンが順に描写されています。その場の光景、ジュリエットの到着、ロメオ の到着、二人の対話、第三者の到着、逃避、というふうに。つまり、あるカットから次のカット へ、あるシークエンスから次のシークエンスへと、つねに移り変わります。結果として、組曲 のうちの1曲の中に、5つの異なるテンポが生じます。しかもその全てを、美しいカメラワーク さながらに、滑らかに繋げていかなければなりません。 私の身体、さらにDNAの中に、ヴィオラ&ピアノ版が根づいていたため、ピアノよりもいっそ う広い強弱の幅をもつオーケストラと《ロメオ》を演奏することに、当初、戸惑いました。また たとえば、ピアニストの手は、トランペット奏者の吹奏に比べて敏捷に動きます。ですから新 版では、オーケストラと互いに歩み寄らなければなりません。その点で今回の《ロメオ》の録 音は、私たちが協力して成しとげた“冒険”にたとえられます。
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