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32 ウォルトン / グリジ / プロコフィエフ ふだんから同時代の作曲家たちと交流しているのですか? 私たち演奏家の仕事は、作曲家なしには成立しません。特にヴィオラ奏者たちは、当然な がら同時代の作曲家たちの動向に大きな関心を抱いています。なぜなら20世紀のはじめ 以降、ヴィオラは、もはやヴァイオリンやチェロの陰に隠れることはなくなったからです——今 や、ヴィオラのために書かれたレパートリーが確立されています。とりわけグリジの新作初演 に関しては、同時代の作曲家とのあいだに強力で濃密で建築的な協力関係を築けたとい う、深い達成感を得ることが出来ました。 お話を聞いていると、ヴィオラやそのレパートリーを守り発展させていくのだという、強 い意志を感じます…… 確かに、それが私の望みです!しかも本盤は、その実践の一つです。昨今、学生の指導 やマスタークラスを通じて、若い世代の演奏者たちと触れ合うようになって気づいたのです が……『English Delight』で私が取り上げた楽曲は、録音以前には知られていなかったの に、最近では演奏されています。若者たちは、クラークの《ヴィオラ·ソナタ》や、ブリッジやヴ ォーン·ウィリアムズの作品について知っていて、演奏したがっています。私にレベッカ·クラ ークのソナタの録音を薦めてくれたのは聴衆でした。そして今度は若いヴィオラ奏者たち が、このソナタを手に取り、演奏し、この作品を生き長らえさせようとしています……。それ は、傑作だけを集めたプログラム——たとえばシューマンの《おとぎの絵本》やシューベルト の《アルペジョーネ·ソナタ》やブラームスの作品——をただ提案するよりも、少しだけ“面白 い”取り組みだと私は思います。すでにそれらの傑作からは、多くの模範的な演奏が生ま れていますし……。もちろん私は、機会があれば、それらの傑作も喜んで録音します。しか しいっぽうで私は、『English Delight』や本盤が、知名度の低い作品や新たなレパートリー の紹介に繋がることを嬉しく思っています!
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