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アドリアン·ラ·マルカ 31 プロコフィエフの音楽とは、また別の繋がりがあります。私は、彼の音楽をつねに愛し、繰り 返し演奏してきました。新人賞に輝いた“ヴィクトワール·ド·ラ·ミュジーク”でも《ロメオ》を弾き ました。 本盤に収められている《ロメオ》のヴィオラ&管弦楽版は、ヴァディム·ヴァシーリエヴィチ·ボ リソフスキー(1900-1972)が手がけたヴィオラ&ピアノ版——プロコフィエフ自身が公認した 版——をもとにしています。ボリソフスキーはソ連の偉大なヴィオラ奏者で、ベートーヴェン 四重奏団の創設メンバーでもありました。ですから、彼の編曲版を演奏してプロコフィエフ を裏切ることになる心配はありません。今回は、この版のヴィオラ·パートをそのまま維持し、 ジャン=ピエール·ヘック——優れた管弦楽編曲家、作曲家、指揮者です——にピアノ·パー トをオーケストラ用に編曲してもらいました。これまで、この編成で《ロメオ》が演奏されたこ とはないので、とてもわくわくしました。私たちは、全体のバランスや各テンポを調整し、色 彩を豊かにするために幾つか部分的な加筆や変更をおこないました。当然ながらリエージ ュ·フィルは、この出来立てほやほやの版を初めて演奏することになりました。とはいえそれ は、10人の金管楽器奏者が突如として発奮し、雷鳴のようにとどろき、音楽の流れを止める ようなタイプの編曲版ではありません。なぜなら——これは録音プロジェクトの根幹とも関わる ことですが——私たちは、新編曲版の“ライブ”での演奏を、当初から強く意識していたから です。私としては、新版は演奏会でも通用しなければ意味がないと考えていました。もちろ ん、録音だけが目的であれば何だってできます!しかし、もともと《ロメオ》は誰もが聞きた い人気曲ですから、舞台でも演奏できるのが理想的です。しかも驚くことに、これまでロシ アでさえ、類似の編成による版は存在しませんでした……1曲も。誰も、試みなかったので す。ですから今回、これほど有名な曲が、独創的なアイデアに発展し、それをかたちに出 来たことを嬉しく思います。 グリジとはすぐに意気投合しました。私がリエージュ·フィルのレジデント·アーティストを務め たことをきっかけに知り合い、すぐさま互いの距離を縮めました。私自身は、グリジをより深く 知るために、彼の音楽に親しみ、彼の作品を演奏しました。彼もまた、新曲の方向性を探る 必要がありました。というのも彼は、以前に弦楽器のための協奏曲を書いたことはなかった のです。

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