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30 ウォルトン / グリジ / プロコフィエフ いわば、ベートーヴェンあるいはシュトラウスを想起させるテーマ——英雄とその運 命——にもとづく、映画的なプロジェクトということでしょうか? そのとおりです。一人の英雄が、まずプロコフィエフの作品の中でロシア·バレエの音世界 を散策し、次にウォルトンの作品とともに大戦間のイギリス音楽の抒情性に浸り、最後には グリジの現代曲において、文字どおり筋書きが付された音世界を訪ね歩くのです。おまけ に《オン·ザ·リール》は、幾つかのシナリオの分析をもとに書かれています。映画においては しばしば、主たる音楽的な主題と、シナリオの大まかな筋が、類似の手法で発展させられま す。それはライトモチーフの原理と同じです。私たちは音楽の助けによって、その後の展開 を予感したり、あるいは予想したりすることができます。息づかい、情熱、コントラスト……グ リジの新曲の中には、私たちが優れた冒険映画に期待するあらゆる要素が音楽的に見出 されます。その音世界は、抒情性の極み、愛、優しさ、葛藤、闘い、疑念に満ちています。 3曲は共通点によって結ばれているとのことですが、各曲と貴方自身の関係性について も、それぞれお話しいただけますか? ご存知のとおり、今日、いわゆる“クロスオーバー”とは無縁のアルバムを制作するのは、極 めて野心的な試みです。現在の経済状況の中で、最も貴重なもの——自由——をアーティス トに提供しているレーベルとタッグを組めた私は幸運です。 私自身は、ウォルトンの協奏曲とともに成長しました。演奏しはじめたのは大昔ですから、 時間をかけて慣れ親しんできた楽曲です。私が実際に演奏した、初の本格的な協奏曲で もあります。この曲と私は、今では“つうかあの仲”です(笑)

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