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アドリアン·ラ·マルカ 29 3作には、どのような繋がりがありますか? デビュー盤『English Delight』では、レベッカ·クラークの《ヴィオラ·ソナタ》を軸に、もっぱら英 国の作品をプログラミングしました。そして私は今回もまた、一つの意味に貫かれたプログ ラムを望みました。私の場合、全ての収録曲が共鳴し合い、意味を共有するディスクを作り たいという強いこだわりがあるので、どうしても構想に時間がかかります! ウォルトンは、映画音楽の作曲家としても活躍しました。この叙事詩を想わせる抒情的な《 ヴィオラ協奏曲》も、まるで映画音楽のように響きます。今回のプロジェクトの最初の目的は ウォルトンの協奏曲の録音でしたので、彼の協奏曲と何らかの一貫性を築く曲を選ぼうと決 めました。もちろん、協奏曲をテーマに、ウォルトンとバルトークとプロコフィエフの3大協奏 曲を集めたアルバムを作ることもできたはずですが、それでは意外性がありません。私にと ってプログラムは、音楽的に何かを“物語る”ものです。たとえば今回は、各曲においてヴィ オラが“英雄”となり、映画的とでも言えるような冒険を繰り広げます。 《ロメオとジュリエット》は、恋愛物語であり、冒険物語であり、家族の物語であり、政治がも たらす分裂をめぐる物語でもあります。映画とも結びつきの強い《ロメオ》は、ウォルトンの協 奏曲と共鳴し合います。しかし本盤の何よりの目玉は、グリジの《オン·ザ·リール》でしょう。 彼の作曲様式は、映画音楽やゲーム音楽から深い影響を受けています。 《ロメオ》やウォルトンの協奏曲は、私に英雄の物語を想像させます。そしてそれは、グリジ の発想にも通じています。《オン·ザ·リール》において、ヴィオラは英雄という設定なのです。 しかもグリジは、楽譜にシナリオ——というよりむしろ、筋書きの小見出しのようなもの——を書 き入れています。“英雄の闘い”、“傷ついた英雄”、“英雄的ファンタジー!”などなど…… 。こうして私のプロジェクトの中で、ウォルトン、プロコフィエフ、グリジが結ばれました。3作の 様式が、ヴィオラが主役の“英雄の物語”を介して出会ったのです。

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