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フローリアン・ノアック 35 フローリアン·ノアックは、二つの決意を胸に抱いて本盤の録音にのぞんだ。一 つは、自身初となるセルゲイ·プロコフィエフの楽曲の録音に挑むこと。もう一 つは、演奏者の存在を覆い隠す傾向のある作品とは、あえて距離を置くことで ある。なぜなら、知られざる作品や極度に個人的な作品、あるいは編曲作品を 選曲すれば、当然ながら奏者は、自分自身が目立ち過ぎることのないよう、曲の 背後に身を隠すからだ。 “独自性を特長としないアルバムを録音すべき時が、やっ て来たのではないでしょうか?” ノアックの意向は容易に理解できる。すでに存在する膨大な数の録音を前にし た彼は、あまりに多くの解釈が世に出されてきた事実に、ただ呆然としたはず だ。そして幾つかの楽曲については、すでに全てが言い尽くされたと感じたに ちがいない。目の前に並ぶあまたの解釈に、的を射た僅かなりとも独自な解釈 を付け加えることなど、もはや不可能なのではないかと……。
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