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36 オッフェンバック まずは今回の録音が実現した経緯をお聞かせください。 グザヴィエ・フィリップ : まず私が、《2本のチェロのための二重奏教程》を演奏したい、 あわよくば録音もしたい、と望みました。ただし一連の二重奏曲を奏でるには、しかるべき パートナーを見つけなければなりません。《教程》は、才気とユーモアに富んだ作品集であ る一方、途方もなく演奏が困難な作品集でもあります。二人のチェリストが堅く手を結び、こ の“困難”に二人三脚で立ち向かわなければなりません。私がアンヌと共にこの冒険に挑 みたいと考えたのは、かねてから彼女に尊敬の念を抱いていたからです。それまでの私た ちは顔見知り程度の間柄で、互いに腰を据えて仲を深めるまでには至りませんでした。つ まり私たち二人は、今回の録音プロジェクトのために初めて関係を築いたのです。ですから 相性の良し悪しについては“一か八かの賭け”でした。ただし、二人には幾つかの共通点も あります。私が頻繁に共演しているピアニストのフランソワ=フレデリック・ギィ(彼はアンヌと も度々共演しています)から、私とアンヌが音楽的に似ており、サウンドも同種であると、事 あるごとに指摘されていました。今回のデュオ結成は、いわばギィのアイデアを発展させた 結果です。もうひとつ忘れてはならないのは、アンヌと私が“敵手”として向き合った思い出 です。というのも私たち二人は、1989年にパリで開催されたロストロポーヴィチ・コンクール に出場し、ライヴァルとして競い合ったのです!オッフェンバックの二重奏曲には、二人の 奏者が“敵手”風に対立する場面もあります。ただしそれは、より無防備で、楽しげで、ユー モラスな対立です。いずれにせよ、オッフェンバックの二重奏曲の演奏は、各奏者がパート ナーに全幅の信頼を寄せなければ成立しません。私たち二人は録音の際、どんな難易度 の曲を弾く場合にも、互いを信頼し合いました。 アンヌ・ガスティネル : 30年前からずっと、私たちは互いに尊敬の念を抱いてきまし た。その間、ごく稀にしか共演機会はありませんでしたが、互いの活動に注目し続けてき ました。だからこそ私たちは、今回のデュオ結成が功を奏すると確信していました。二人 のサウンドが同種だという指摘については……私はそうは思いません。録音マイクを設置 する際に、二人のサウンドが随分と違うことを思い知らされたからです。とはいえ、グザヴィ

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