44 ブラームス / クラリネット・ソナタ - ホルン三重奏曲 “人は運命を避けようとして選んだ道で、 しばしば運命に出会う。” ラ・フォンテーヌ 音楽に導かれた運命 稀有な音楽家であるジョフロワ・クトーが歩んできた道は、“規格外”である。幼少期の彼は日 々、体操選手を目指して高度な練習に励んでいた。彼は体操を通じて、自由を知覚し、空間を 認識し、強烈な身体感覚を身につけた。間違いなく彼は、リスクを冒して自らを挑戦にさらす 行為を、音楽以前に、楽器の練習とは無関係に体験していた。音楽は長いあいだ、彼にとって 単なる趣味の一つに過ぎなかった。やがて10代になった彼は、ついにその必要性を悟ること になった。 音楽を聞くこと、音楽の中に無限の表現を見出すことは、次第にクトーの内面世界の核とな っていく。やがて音楽への没頭を“なすべきこと”として認識しはじめた彼は、音楽的な理想 に惹きつけられ、音楽的な理想から挑戦を突きつけられ、音楽的な理想へと導かれることに なる。以来、彼は自らの情熱(passion)と職業(profession)を合致させようと絶えず試み た——しかし、この本来は矛盾する二つの要素を歩み寄らせるためには、どうすべきなのだろ う? 彼にとって、音楽家になることはトロフィーを集めることではなく、自分の声が他者の 声よりも重要であると証明することでもなかった。むしろそれは、楽曲に身を捧げ、楽曲を生 き、楽曲を奏でるために楽曲と対峙することを意味した。
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