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36 ブラームス / クラリネット・ソナタ - ホルン三重奏曲 とりわけ穏やかな第3楽章〈アレグレット・グラツィオーソ〉は、前楽章の沈思を断ち切り、舞 曲風の大衆的な旋律を紡ぐ。その無邪気なまでの簡明さは、純真で優美な中間部によってさ らに強化される。 この牧歌的な曲調は、終楽章〈ヴィヴァーチェ〉に受け継がれる。出だしのファンファーレがカ リヨン(組み鐘)をほのめかしたのち、田舎風の賑わいを聞かせるロンドがはじまる。陽気なロ ンド主題は、等しく創意と魅力に満ちた一連の短いエピソードと交替する。 《クラリネット・ソナタ第2番》は3楽章形式を採る。おそらくはこの楽章構成が、第1番を凌 ぐ統一感を第2番にもたらしている。どこまでも「若々しい」第1楽章〈アレグロ・アマービレ〉 は、息の長い——「アマービレ[愛らしく]」の指示にふさわしい——安らかで晴れやかな主題 とともに開始する。この主題は、まるで屈託のない音の散歩のように、あらゆる劇的な要素を 締め出しながら繰り返され、高揚し、別の二つの主題によって彩られていく。素晴らしい結末 は、悩ましいほどの美を湛えている。 ほの暗いエネルギーを放つ第2楽章〈アレグロ・アパッショナート〉は、ブラームスの音楽に遍 在するラプソディックな精神に通ずる、勇壮な筆致を特徴とする。中間部が峻厳な行進曲を 聞かせたのち、冒頭のアレグロ部が回帰し、落ち着いた結末を迎える。

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