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35 ジョフロワ・クトー / ニコラ・バルデイルー / ジョフロワ•クトー / アントワーヌ•ドレフュス 二つのクラリネット・ソナタの稀有な曲調を支えているのは、形式面での熟達である。驚くべ きことに、この2曲の形式は、一切の事前の設計なしに、もっぱら詩的な内容に従っている。ソ ナタ第1番の出だしから、詩情は厳格さを押さえ込む。精巧な第1楽章〈アレグロ・アパッショ ナート〉は、ピアノのオクターヴによる序奏で幕を開ける。その後に提示される極めて叙情的 で柔和な主題は、荒々しさと優しさを交替させる力強いピアノの“句読点”をともなう。つづい て交互に現れる他の幾つかの主題は、粗暴あるいは内省的であり、瞑想的あるいは無骨であ り、さらには耳障りでさえある。ラプソディックな曲調に貫かれたこの楽章は、旋律・リズムの 両面において多様かつ豊かであり、優しさと威厳を絶えず対比させる。ほの暗さと霊妙さを 併せもつ崇高なコーダは、夜の中へ消えていく。そこで語っているのは、この上なく気高いブ ラームスだ。 第2楽章〈アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ〉は沈痛な歌である。複雑な第1楽章とは打って 変わり、この簡明なロマンスには、力強くも節度ある感情が宿っている。それは、《クラリネット 五重奏曲 作品115》のアダージョ楽章にも見出されるモーツァルト的な純粋さであり、同様 の精神を受け継ぐ中間部によっても決して掻き乱されない。その後、まずはピアノが冒頭の主 題を——またもや子守唄のように——回帰させる。この楽章を締めくくるのは、もはや歌では なく、魂の愛撫である。

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