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30 ブラームス / クラリネット・ソナタ - ホルン三重奏曲 ヨハネス・ブラームスのホルンへの愛は、父ヨーハン・ヤーコプによって少しずつ植え付けら れた。若きブラームスにホルンを紹介したのも父だった。以来ホルンは、ブラームスの人生に つねに寄り添い、彼の音楽の中で絶えず顔を現すことになる。それどころか彼は、しばしばホ ルンに重要な役割を託した。その好例である二つのセレナード(作品11・16)は、ブラームス と18世紀音楽——彼がこよなく愛したヘンデルの野外音楽——を結ぶ絆を物語っている。 その精神は、ブラームスの《ホルン三重奏曲》はもとより、《2本のホルン、ハープ、女声合唱の ための四つの歌 作品17》や交響曲(第2番第1楽章の穏やかなコーダにおける、あの素晴 らしいホルン独奏を思い起こそう)、さらに《ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 作品 102》の中で息づいている。《ピアノ協奏曲第2番作品83》の幕開けを担うホルン独奏は、とり わけ有名な例だろう。 ホルンは19世紀前半にバルブを授けられ、飛躍的な発展を遂げた。ただし、ブラームスが 溢れんばかりの創造力に突き動かされて書き上げた《ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40》 (1864/65)は、本来、バルブを持たないナチュラル・ホルンのための曲である。ドイツ語圏で 「ヴァルトホルン」(「森の角笛」の意)と命名されたナチュラル・ホルンは、優れた音色と清澄 なリリシズムを特長とする。私たちは、この楽器を頼りに、ブラームスの想像世界を探ること ができる——彼は、この喚起力に富んだ「アコースティックな」手段を用いながら、シュヴァル ツヴァルト[黒い森]のひっそりとした——しかし生物たちがうごめく——巨大な空間と、そ の明暗、その計り知れぬ詩情を感じ取り、それらを表現しようと望んでいた。

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