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アモリ·コエトー / ジョフロワ・クトー 35 ブラームスと近しかった音楽評論家エドゥアルト·ハンスリックが“彼のもっとも創意に富ん だ音楽の一つ”と評した第3楽章〈ウン·ポコ·プレスト·エ·コン·センティメント〉は、ウィーンの 情緒にあふれる優れた間奏曲――ブラームスが好んで用いた形式だ――である。気まぐれ で、快活で、機知に富んだこの奇想曲は、一瞬、光輝な模倣的パッセージを挟む。その後に ピアノ·パートに回帰する飛び跳ねるような主題は、ただちにヴァイオリンの最後の旋回の 中に埋もれる。 終楽章〈プレスト·アジタート〉は、冒頭から音を“噴火”させ、雄々しく突進するが、すぐさま コラールによって行く手を妨げられる。コラールが生むきわめて雄弁な第2の旋律は、ヴァ イオリンに託される。騒然たる展開部ののちにコラールが回帰し、不意に曲が閉じられる。 ブラームスがこの楽章で繰り広げるのは、叙事詩を想わせる勇壮な筆致だ。《4つのバラー ド》や《ピアノ協奏曲第2番》を支えた若き日の燃え立つような熱気が、ブラームスの内で再 び目を覚まし、この楽章を突き動かしているのである。 歴史上のそうそうたる大作曲家たちの中で、ブラームスは決して“老いる”こと がなかった稀有な存在である。彼はただ、20歳の頃からずっとそうしてきたも のを変化させ、多様にしつづけたのだ……。ひょっとすると私たちは、この時間 を超越する感覚ゆえに、ブラームスの音楽を同時代的に受けとめるのかもし れない。
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