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32 ブラームス / 3つのヴァイオリン·ソナタ ブラームスは、ピアノとヴァイオリンの奇跡的ともいえる協調関係を《ヴァイオリン·ソナタ第 2番イ長調作品100》でも踏襲した。作品は、1886年の夏にスイスの避暑地トゥーン湖畔 で書き進められた。晴れやかなイ長調は、すでに《ピアノ四重奏曲第2番作品26》で採用さ れた調性だ。同じく1886年に生まれた《チェロ·ソナタ第2番ヘ長調作品99》の活気ある前 向きな性格は、《ヴァイオリン·ソナタ第2番》と通じ合っているように思われる。歌曲集《5つ の歌作品105》も、この“豊作”の夏の成果の一つであり、全5曲のうち3曲のモチーフが、《ヴ ァイオリン·ソナタ第2番》でも用いられている。第2番の通称“トゥーン·ソナタ”は、ブラーム スと親しかった詩人ヨーゼフ·ヴィクトル·ヴィトマンによる呼称にちなんでいる。あるヴィトマ ンの詩――ブラームスがこよなく愛したバラードの形式で書かれている――は、当時のブ ラームスの幸せな心境を伝えてくれる:(“ …)晴れやかな夏の日に/僕はまどろんだ/僕が 見た夢は/あまりにも愉快で/うまく語ることができない” 第1楽章〈アレグロ·アマービレ〉の幕開けは、《ソナタ第1番》の牧歌的な曲調を引き続き聞 かせる。冒頭でピアノが奏でる、ややおどけた穏やかなフレーズは、作品105の一曲からの 借用であり(ワーグナーの《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の有名なモチーフにも似 ているが偶然である)、やがてヴァイオリンに受け継がれる。甘美な哀愁を漂わせる第2主 題が次第に活発になる。よりリズミカルで強固な第3の主題が曲の流れを主導しはじめる と、2つの楽器が見事に融和する。長大で迫力のあるコーダは子守唄のように夢想的でも あり、この楽章の力強いエンディングを演出する。

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