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アモリ·コエトー / ジョフロワ・クトー 27 天才と呼ばれる者たちも、時に出会いの恩恵を受ける。ブラームスもまた、出会いに触発 され、数々の傑作を世に送り出した一人だ。よく知られているのは、晩年の彼に霊感を与 えたクラリネット奏者リヒャルト·ミュールフェルトとの出会いだろう。他方、ブラームスがヴ ァイオリン奏者ヨーゼフ·ヨアヒムと親しくなったのは、若かりし頃の1853年である。二人 を引き合わせたのは、ブラームスが15歳のときから知り合いだったハンガリーのヴァイオ リン奏者エドゥアルト·レメーニだ。ブラームスは彼を介してハンガリーの音楽にも出会って いる。彼はブラームスをともなってヨーロッパ各地を演奏旅行し、有名な《ハンガリー舞曲 集》が生まれるきっかけをも作った。ブラームスにとって、ヨアヒムとの出会いは運命的だっ た。ヨアヒムもまた、ブラームスを“心優しい理想主義者”と呼び、すすんで彼に賛辞を贈っ た。“これまでの芸術家人生の中で、私の心がこれほどの驚嘆に満たされたことは一度もな かった。というのは、ある金髪の内気な友人が、私の前で自作のソナタを奏でてくれたのだ。 その曲は、私たちの想像を遥かに超える力強さと独創性を具えているうえに、気高く霊感 に満ちているのだが(…)彼のこの上なく優しく、想像力に富んだ、自由で情熱的な演奏ぶ りに、私はすっかり魅了された”と、ヨアヒムは書いている。
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