LDV64.5
ジョフロワ・クトー / アモリ·コエトー / ラファエル·ペロー / ニコラ·バルデイルー 39 ニーチェは、この秋を想わせる色調を、風景画家クロード・ロランの作 品の中に好んで見出していた。誰しも、この色調が決して失われること のないよう、“永遠性”を与えたいと望む。そしてブラームスの全てのク ラリネット作品を彩っているのも、この楽器に固有の“金褐色”の音色 なのである。op.114の第1楽章〈アレグロ・アラブレーヴェ〉では、はじ めにチェロが悲痛なフレーズを奏でる。これをクラリネットが繰り返す と、全てが勢いづき、対立とは無縁の結束の対話が繰り広げられる。抒 情的なロマンスである〈アダージョ〉では、クラリネットが歌い始めた 後、チェロがこれを受け継ぐ。ひそやかで穏やかな雰囲気に包まれた音 の瞑想は、ピアノが奏でる伸びやかな第2主題を除いては、何にも妨げ られない。“ワルツ風”の第3楽章〈アンダンティーノ・グラツィオーソ〉を 支えているのは、またしても、極めてウィーン的で官能的な動機である。 ブラームスは、終楽章〈アレグロ〉で回帰させた荒々しく勇壮な曲調を、 かろうじて曲の結末まで維持する……。
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