LDV64.5

ジョフロワ・クトー / アモリ·コエトー / ラファエル·ペロー / ニコラ·バルデイルー 37 第1番・第2番と比べると、《ピアノ三重奏曲第3番ハ短調op.101》(1886)の書法は、より簡 潔で濃密である。この上なくベートーヴェン的なハ短調の調性がもつ英雄的で力強い性 格が、書法の濃密さを助長しているのかもしれない。第1楽章〈アレグロ・エネルジコ〉の主 要主題を成す短い動機は、極めて暗く、悲劇的だ。それは狂詩曲風の行進曲で、管弦楽 的な力強さも兼ねそなえている。新たに現れる魅惑的な楽想が、この主要主題の抑えが たい興奮を和らげる。第2楽章〈プレスト・ノン・アッサイ〉は、足早に通り過ぎていく間奏曲と いった風情だ。ウィーン風の魅力を漂わせる、優雅で機敏な楽章である。引き続きウィーン 的な第3楽章〈アンダンテ・グラツィオーソ〉では、優しく揺らぐ歌(まるで子守歌のようだ!) が紡がれる。その素朴さは、聴く者の心を打つ。終楽章〈アレグロ・モルト〉も、第1楽章と同 様、行進曲風の足取りで進んでいく。ただしこの楽章を特徴づけているのは、ブラームス がこよなく愛したジプシー音楽からの影響が色濃い抑揚である。

RkJQdWJsaXNoZXIy NjI2ODEz